共立女子中学校 先生インタビュー「生徒の実力をあげる、そしてユーモアのある教え方ができる教員を目指しています。」

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取材日:2016年12月7日 インタビュイー:数学 中学ソフトテニス部顧問 鈴野一高先生 インタビュアー:一橋大学経済学部4年 髙島志歩さん(共立女子OG)

1. 先生になった一番の動機

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高島: 先生になった一番の動機はなんですか?

鈴野先生: 私はもともと研究者になるつもりで大学院に進学をして、その後も数学の研究をずっとやっていこうと思っていました。でも助教授とか助手とかになる前はなかなか稼ぎどころがないので、アルバイト非常勤講師をして食いつなごうと思って、教職の資格を取ったんです。それで大学院修士の1年生の時にある学校で授業をする機会があったのですが、研究よりも 授業の方に夢中になってしまう自分に気がついて、授業をする生活をこれからもしていきたいなと思って、専任の先生になることを決めたという感じです。

高島: 大学院の時に他の仕事でなく先生をやってみようと思ったのは、なんか理由はあったのですか?

鈴野先生: 純粋に時給が良さそうだったのと、ちゃんとした場所だし、短い時間で稼げるので。

高島: 研究者になろうと思ってたのが、それが転機となって、先生をやろうってなったわけですね?

鈴野先生: そうですね。

2. これまでに習った尊敬できる先生

高島: これまでに習った尊敬できる先生を具体的に教えてください。

鈴野先生: 実は高校時代は、「数学の先生って全然数学できないじゃん」と思っていて、いつも習った瞬間に「自分の方が解ける」ってあんまり根拠のない自信を持っていました。 ただ高3の時に予備校で教わった物理の森先生という方は尊敬していました。面白いだけの先生とか、厳しくて力だけはつくという先生は割といたと思うけど、両方兼ね備えていて実力を上げてくれた先生でした。

高島: 今でもその先生を参考にするというか、目指してる部分もあるんですか?

鈴野先生: そうですね。ユーモア的な部分と本質をしっかり理解して伝えるってことで、意識をしている部分もあります。

高島: 物理をいろんなアプローチで教えているとはどんな感じですか?

鈴野先生: たとえば電車に乗って座っている人は、おしりに力を受けて動いてるんだって言い方をしてて。確かにおしりって摩擦力で体が横に行くじゃない。そういう発想とか考え方とかを教わった先生です。

3. 教師になった直後と現在とで先生ご自身で大きく変わったこと

高島: 教師になった直後と現在で、先生ご自身で大きく変わったことはありますか?

鈴野先生: 私は口下手で言葉もたどたどしくて、一応今も伝わるようには話してるつもりなんだけど、もともとはそれすらも全然できない人だったんです。授業は教える内容があって、それを伝えればいいから話せるけど、例えばフリートークとか、専任になってからの朝礼の10分間のお話とか、そういうのはまったくできなかったんですね。それが今10年目になって、それなりにリアクションしてくれれば話せるかな、くらいになってきて。今ならなにも用意しなくても、10分ぐらいならなんとか話せるようになりました。

高島: 前は準備して、毎回考えて?

鈴野先生: うん。ガチガチに作り込んで、「この10分、どうしよう」と思っていた時期もありました。

高島: そうだったんですか?

鈴野先生: あとは女子中高生の性格、性質がすごくよくわかってきた。共立だと中1は純粋な真面目ないい子で、中2になると角が生えてきてちょっと反抗期がきて、中3の終わりぐらいまでそれがずっと続いていく。中3の終わり頃になると角は抜けてきてるんだけど、まだ反抗はやめられなくて、高校生になった瞬間ぽろっと抜けて、ちゃんとした対応のできる人間になる。

高島: 確かに(笑)

鈴野先生: そういうのがよく見えるようになりました。反抗期の生徒たちも、個別で会って話すと大体は良い子なんです。だからどう対応・対処すれば、反抗期をうまく受け流して集団としてちゃんとやれるかというのが、技術として身についてきたと感じています。

4. 大学に行くことの意義

高島: 大学に行くとどんないいことがあるか、と生徒に質問されたらどう答えますか。

鈴野先生: その生徒が何について悩んでるかにもよるとは思うんですけど、日本は大学に行くと得するようなシステムになっているんだというのは、はっきり言ってしまいます。日本はそういうシステムだと。 将来何をやりたいかとか、大学で勉強したことを仕事にするとかいう話は、親や学校の先生からもよく聞くと思うし、理想論的な話は生徒は割とわかっています。でも実際、高校時代に就きたい仕事についてを考えている生徒は少ないし、高校時代に考えていた仕事に就く人ってほとんどいないと思うんですね。

高島: はい。

鈴野先生: 高校時代に将来のことを決めて、大学に行ってそのまま仕事をするのがほんとに正しいか、生徒の立場じゃわからないと思う。だから、大学に行く人生・行かない人生・高卒で仕事をする人生と並べてみて、「やりたい仕事があってそのノウハウがあるんだったら、高卒で仕事してごらん」という話はします。ただそうすると、だいたいそんなもの持ってないから、「じゃあ 大学行こう」となるようです。

高島: 共立だと基本的に全員大学受験すると思うんですけど、行く必要あるのかなって思っちゃう人ってけっこういるんですか?

鈴野先生: 意外といますね。保護者とか学校の意向で、何となく受験する方向には行くんだけど、そこで自分が選択したっていう意識を持たせてあげたいなと思っています。 高島:高2・高3の時、先生から大学の話を聞くことはけっこう多かった気がします。大学院の話かもしれないけど、こういう感じなんだなっていうのは先生の話をきいてわかりました。

5. 中高一貫校にあって一般の中学校にないもの

高島: 中高一貫校にあって一般の中学校にないものと言ったらなんですか?

鈴野先生: カリキュラムは一番かなって思いますね。高校入試に向けての勉強がカットできるのと、あとは6年間を見通して授業ができるので、中学3年分を中2までに終わらせて、高3の最後の1年間を復習に回せるのがいいところだと思います。

高島: ソフトテニス部の顧問をずっとされていますけど、それで感じることってありますか?

鈴野先生: 数学では、高校生になった時にできるようになるために、中学生の頃は「これが必要」という感覚は持っています。テニスは初心者ので、最初はわからなかったのだけれど、10年も顧問をやってると数学と同じように、中学の頃こういう練習をすれば高校でこうよくなってくる、というのが少し見えるようになりました。

高島: そうなんですね。

鈴野先生: 中学で勝てなくても高校になって勝てるようになるチームもあって、それは中学の頃これをやってたから良かったとかいうのを、あとで生徒が教えてくれるんです。そういう練習を中学生にさせようと考えるようになってきました。 最初の頃は中学で勝つことを考えていたけど、そうすると小手先のテクニックとかが大事になってきて、それやってると高校で勝てなくなっちゃう。だから中学で勝ちにこだわりすぎるのはやめよう、っていうような判断が少しずつできるようになりました。

高島: 初心者で顧問をやるのは大変でしたか?

鈴野先生: 非常に大変でしたね。最初は技術的なものは何も教えられないのに、部活の規律に従って厳しく教えなきゃいけないことがたくさんある。それを注意するだけの先生は生徒にとって、嫌でしかないですよね。だから最初の頃は、言うことを聞いてもらえなくて大変でした。

高島: なるほど。でも6年間通して一つのスポーツをできるのも、いいことですよね。

鈴野先生: そうですね。もちろん公立に行く生徒でも中高と続けてやれるんだけど、同じ学校で指導もつなげてできるのはすごくいいところだなと思います。

6. 共立にあって他の私立にないもの

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高島: 共立にあって他の私立にないものといったらなんですか?

鈴野先生: 私も共立での仕事が一番長いから、その質問がすごく難しいなと思って、生徒に今日聞いてきたの。

高島: そうなんですか?

鈴野先生: 生徒が言ってたのはトイレがきれい(笑)

高島: いやー、ほんとにそれはそうですよ。私もそこはポイントだと思ってますよ。お掃除の方には心から感謝しています。

鈴野先生: ほかには、礼法の授業が本格的。礼法がある学校は結構あるみたいだけど、その内容がすごくちゃんとしてると言ってましたね。それから、プールがない。これもプラスにとらえる生徒は多いようです。あと、今年からアップルTVが教室に入って、タブレットの画面を黒板に映せるようになりました。

高島: 知らなかったです。

鈴野先生: だから手で書くとすごく時間のかかるものを、映像ですぐに出せる。例えば区分求積法の説明の時、グラフとx軸で囲まれた部分を長方形で区切ったものを、細かく分解していく映像をタブレットに作っておいて、黒板に投影してぱっと見せることができるんです。後は演習の授業だと生徒が書いている答案をちょっと取らせてって言ってカシャって撮って、それを黒 板に映して黒板上で添削ができる。そういうことができるようになっています。

高島: すごい。ハイテクですね(笑)

鈴野先生: あとは、美術や音楽のレベルが高いという意見もありましたね。受験科目以外の教科も力を入れているとは言われているみたいです。体育で追試がある学校ってなかなかないとか。

高島: 音楽はほんとに本格的なことまでやって、テスト前は結構覚えるのが大変でした。

鈴野先生: でもそれがたぶん教養となって残るんだろうね。

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高島: 確かにあんまり大学受験、大学受験ではなく、いろいろなことがやれたなって思います。

編集部: 本格的ってどういうことをやったんですか?

高島: 音階とか楽譜の読み方を一から全員学ぶみたいな。

鈴野先生: 何か楽器ができなくちゃとかじゃなくて理論だよね、あくまで。

高島: そうです。音楽の楽典を、けっこう細かくやって、それが普通に定期テストで出てくるので、割とみんなちゃんと勉強していました。

編集部: あと体育の追試についてですが・・・

鈴野先生: たとえば、バレーボールのサーブのテストで、何回かな?10回中5回入らなかったら追試というように、入るまで頑張る感じですね。

編集部: けっこう厳しいですね。

鈴野先生: 厳しいですね。もちろん先生方もずっと付き合って指導するんですよ。

高島: ダンスも追試ありますよね。新体操という共立独特の体操をする授業があるんですけど、それも覚えてない生徒はできるまでやります。

鈴野先生: 中学だとラジオ体操も追試あるでしょ。運動会のとき始めてこの学校の生徒のラジオ体操を見たとき、キレイだなと思った。NHKのテレビに出てる人なみに、指先まで繊細に行き届いているなと、揃えてるなと。あんなにちゃんとラジオ体操できる集団、見たことないです。

高島: 確かに。

鈴野先生: あと共立だと、文化祭が元気です。部活の招待試合で他校の文化祭に行くと、おとなしいなあとすごく感じます。本校の文化祭は、いい感じに大騒ぎというか、楽しくやっているんですね。生徒たちもそうだけど来客者もけっこうにぎやかに。受験生とかも楽しくしているなというのは印象的です。

【※編集部注:中学では道徳の時間に、礼法の指導を3年間通じて2週間に1度、日常の授業として行っています。授業では学校創立以来、小笠原流礼法の形を基本として、落ち着きのある自然で美しい振る舞いを身につけることを目的とした指導が行われています。そして高校では、1年生でのマナー講座、2年生での礼法授業で、より具体的なマナーの形を 学びます。中学1年生のころはまだ動きも堅く、礼もぎこちないのですが、3年生になるころには落ち着きのあるきれいな礼ができるようになります。そして高校生になると精神的にもずっと大人になり、礼法に対する捉えかたも違ってきます。】

7. 勉強以外で一生懸命取り組んでほしいこと

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高島: 中学に合格した子どもに勉強以外で一生懸命取り組んでほしいことはどんなことですか?

鈴野先生: 一生懸命やってほしいことは、まさにその「一生懸命に何かをやってほしい」です。それは部活でもいいし、勉強でもいい。勉強だったら、例えば数学で問題集を解くだけじゃなくて、この公式はなんでこうなんだろうと自分で考えて計算してみたりとか、インターネットで調べたりとか。 そういう自分から動く経験が、特に受験生はなかなかしづらい。小学校のときからいろいろ与えられるし、塾でもそうだから、受け身としてはできる生徒は多いと思います。でも自分から動くことはあまりしてきていないだろうから、そういう経験をしてほしい。そう思って日々、授業などで話しています。

高島: 今でもついつい受け身になりがちです、私。

鈴野先生: どうしても学校でいろんなものを与えるから、受け身でもそのままいけちゃうんですよね。言われてることをやってるだけでも、学校生活は送れてしまう。でもそこで自分はこれをやるっていうものを決めてやるのとやらないのとでは、全然違うと思う。目的を持った時に動ける力を、そういうことで身につけてほしいです。

高島: 一生懸命といえば、共立は部活に入ってる生徒が多い気はします。

鈴野先生: 中1は何かしら入ってますよね。9割は越えてますね。中学全体で約95%、高校で約90%ですね。

高島: 部活が強制っていう学校も周りでは多かったんですけど、強制してないのに90%は多いし、みんな活動的にやってるように思いました。

鈴野先生: 部活をやっていない生徒でも、何もしてないんじゃなくて習い事をしているとか。アイスホッケーを全日本を目指すくらいのレベルで毎日やってて、だから部活には入らないという生徒もいたし、あとはダンスとかバレエとかをやっている生徒もいました。

8. 生徒からの相談で印象的な内容

高島: 生徒からの相談で印象的な内容があったら教えてください。

鈴野先生: これね、一番思い出すのに苦労した。日々いろんな相談があるから、正直どんどん上書きされてしまうんだけど、高島さん、アルバム係だったじゃない?

高島: はい。

鈴野先生: クラスのメンバーが手伝ってくれないって言ったの覚えてる?自分も大学受験の勉強してるから、あまり時間が使えなくて、クラスの友達も中々手伝ってくれなくてどうしたら・・・って言われたの。

高島: 覚えてます。職員室ですよね。けっこうみんな切羽詰まってて、やばかったですよね。

鈴野先生: その時の泣きそうだった顔、すごく覚えてます。その時はたぶん高島さんには、「クラス全体で作るアルバムを手伝ってくれないなら、クラスがそういうクラス(アルバムを熱心につくろうとしないクラス)なんだから、自分が全部背負い込む必要はないよ」という話をしたと思います。クラス全体にハオの状況を知ってもらいたいと思って、「あるば、委員が頑張っていて、人 手が足りない」ということを話したら、次の日から何人か来てくれたんだよね。

高島: そうです。みんなすごい手伝ってくれました。

鈴野先生: クラスに話をするときは、話をすることで手伝ってくれる人がでてきたらいいなとは思っていましたが、高島さんたちが相談に来るくらいなので、みんな相当やる気がないのではないかと思っていました。 受験勉強が大変な時期なので、アルバム作りを熱心にやるかやらないかは、クラス次第だと思っていたので、それを尊重しようと思っていました。でも、話したことで多くの人がアルバム作りをやってくれたんだよね。

高島: 確かに、私も自分から積極的に手伝ってとは言っていなかったと思いました。

鈴野先生: 高島さん達アルバム係もクラスに配慮しすぎていたんだね。話をしたあとは、私は手を出していないけど、思いやる気持ちを持っている人が多い、クラスなんだなと、すごく嬉しく思ったのを覚えています。

編集部: アルバム係というのは、卒業アルバムを?

鈴野先生: 作る係です。たしか高3の11月ぐらいに活動があって、生徒全員の写真を載せて、うちのクラスはみんなですごろくをしてるページを作ったんです。

高島: 画用紙や写真を使って一から作り上げるんですけど、時期が大学受験の前で、私を含む係の4人が「自分も勉強あるのに・・・」みたいになっちゃって。それを相談したんです。

9. 日々の生徒の観察

高島: 生徒の観察を日々どのようにしていますか。

鈴野先生: 授業前、割と早めに行って座っています。あとは、2時間連続の授業だとその間は絶対教室にいる。戻るのもめんどくさいってこともあるけど、生徒と質問の時間も取れるし、観察にもなりますから。だから、なんか用がある生徒は話しかけてくるし、用がなかったら話していることを聞いてちょっとノリで参加して。

高島: 私はあんまり積極的に職員室に行って質問できるタイプじゃなかったんです。でも教室に先生が残ってたり早めに来てくれてると、話せるじゃないですか。よかったなって思っています。

鈴野先生: それでも話せない人もいるから、掃除に参加してちょこちょこ話したり。特に初めての学年やクラスはそれを多くして、全員とコミュニケーションをとるようにはしていますね。

10. いじめへの対応

高島: いじめがあった時はどう対処しますか?

鈴野先生: まずは様子を見る。やってる姿を見るんじゃなくて、周りの生徒からなにか出てくるかこないかをちょっと観察する。それこそ掃除の時とか授業の合間の時とかに普通に話をしている中で、例えば、その生徒は関係なくても「人間関係どう?」「クラスどう?」と聞いたときに、ぽろっと言うこともある。そうするといじめじゃなかったとしても、ここで揉めてるとわかることがあ るとは思っています。

ただ、それだけだとやっぱり出てこないものもある。例えばクラスで数人が一人の生徒を攻撃しているとすると、それが本当に形になっちゃってる時って周りの生徒も訴えられない状態なんだと思うんです。だから「なんかあるの?」って言われても、むしろ口止めされた状態だから「ないです」って言わざるをえない。いじめられてる本人も言えない。

そういう状況になっていると、全員面談ですね。昼休みに一人一人、3分ずつぐらいでも話を聞いてみます。誰かしら言ってくれるか、言ってくれなかったとしても、完全に攻撃してるって確証があれば、「誰かが教えてくれたよ」っていじめているであろう人には言っちゃいます。そこまでひどいことはやってなかったとしても、抑止力には必ずなるはずなので。

あとは、保護者の方にお伝えする。中学生は保護者の方までいけばだいたい収まるとは思うんだけど、私もこれまでたくさん経験したことはないので、そんな作戦で考えてる、という感じです。

高島: 対応は一人でしますか?

鈴野先生: 担任としては個人でできるだけ対応するけど、学年主任の先生や学年団の先生にも絶対に話はします。男なので、女性が対応しなきゃいけない時は女性の先生にお願いしたりとか。あと年上の先生に相談することはありますね。

高島: 中学と高校がけっこう住み分けがあるというか、割とはっきり部活も分かれてるじゃないですか。だから中学でいろいろあったとしても高校の時はきれいさっぱりな印象が私には強くて、そこはいいところですよね。

鈴野先生: そうですよね。何で切り替えられるのかわからないけど、切り替わっちゃってるというのはありますね。リセットされる感じです。

高島: 他の高校は6年間、制服も部活も一緒だったりですけど、共立は中学3年間・高校3年間って区切りがある感じで、そこもいいかもしれないです。

鈴野先生: そう。高3になって「中1の頃、あなた怖かったよ」なんて友達に話をしている人を見かける。「あの頃は話しかけられなかった」とかね。

高島: そうですよね。

鈴野先生: 教員も専任だけで100人以上いる学校だから、色んな人の知恵を借りつつ、解決すると思います。

11. 落ちこぼれた生徒への対応、ずば抜けた長所を持っている生徒への対応

高島: 落ちこぼれてしまった生徒にはどのような対応をしますか。

鈴野先生: 一つの教科単位でいえば、例えば数学だったら習熟度別授業をやっていますし、追試や補習をしているので、それが一つの対応かなと思います。 次に、全科目が全然できない場合。これは以前、中3のクラスにたまたま二人ぐらいいました。高校に上がれるかどうかの話になっていたので、毎日終礼の後に私のところに来させて、その日の授業内容を全部解説させました。社会が一番わからないみたいだったから、これはどういう意味なのって私が質問し生徒に説明させるのを、12月定期テストの前とかに2ヶ月ぐらい続けたことがあります。

そのときは上手くいって偏差値もすごく上がったんだけど、やめてしまった後はやっぱり少し下がってしまいました。でもこうやればできるという経験をさせてあげることは大事なので、このようにできるだけ構うというか、見てるよっていうアピールをしてあげる。声掛けはしようと思ってます。

高島: 共立って、追試とかでできない科目を、全員で上げていこうというスタンスがあると思います。けっこう大人数が追試になるじゃないですか。だからこそ、みんなで頑張ろうみたいなところがあります。

鈴野先生: この学年は英語半分追試とか、そういうことやってましたもんね。

高島: 上ばかりってわけでもないですよね。出来る子がバーって伸びるわけでもなく、下からもどんどん上げていってる感じがします。

鈴野先生: そうですね。

高島: 逆にずば抜けた長所をもってる生徒を、どうやって伸ばしていくかというのはありますか?

鈴野先生: ずば抜けている生徒が複数いるなら、一緒に組ませて勉強させあったり、話し合わせたりします。私が対応するだけだと、時間も限られていますし、伸ばしきれない部分がありますが、生徒同士だといくらでも時間は使ってくれるので、お互いに伸ばし合えると感じています。 一人だけがずば抜けていたら、それは個別に対応して、課題を上げたり話を聞いたりしてやっていきますが、できるだけ近いレベルの人を組ませるというのは意識しています。問題を解いた後に「答えはどう?」とか「どう考えたの?」って聞くとアウトプットの力がつくので、軽いディスカッションというか、話し合わせています。数学の授業は習熟度別だから、上位クラスはできるメンバーが集まってるので、その中からいいアイディアがあったら出してもらって、クラスで発表したりとかしています。

高島: 習熟度別、いいですよね。同じところまで解ける人といろいろ協力できたと思います。そこのクラスで仲良くなれるし。

12. 先生は人気あると思いますか。

高島: 鈴野先生は人気あると思いますか。

鈴野先生: どう思いますか?

高島: 人気あると思います。すごい話しやすいなと思います。(笑)

鈴野先生: 人気で仕事している部分はあって、最初は人気がすごく大事なんです。授業を持った時に、最初に「なんか汚いな」とか「気持ち悪いな」なんて印象を持たれちゃうと、いい話をしても聞いてもらえない。だから最初は、ちょっとパフォーマンスに徹する部分はあるなと自覚してます。例えば最初の1ヶ月の授業の中で、円周率の3.141592・・・・をバーッて書くの をどこかでやる。

高島: やってましたね。

鈴野先生: そうすると「何この人?」みたいになるんだけど、それに食いついてくれる生徒が出てくる。その生徒たちと話している姿を見て、他の生徒もこの人話せるんだなって思ってくれる。そう思っています。そこで人気という名のものをある程度手にしたら、それを信頼に変えていく。

高島: 先生から見て、人気のある先生っていますか?

鈴野先生: たとえば金井先生はすごい人気ですね。金井先生、うちのクラスの授業は全然見てないんだけど、大学受験の推薦入試の推薦書をちょっと見てもらったりするとすごく丁寧に対応してくれて、でも内容はしっかりズバズバ言ってくださって。生徒はほんとに数回しか話したことないっていう生徒からでも、ちゃんとした信頼感をとても感じているようです。

高島: 確かに信頼感は大事ですね。

鈴野先生: だからぜひ、人気じゃなくて信頼感にかえしていきたいな、と思っています。

13. 学校の好きな点、もっとこうしたらいいのにという点

高島: 学校の好きな点、もっとこうしたらいいのにという点を教えてください。

鈴野先生: 好きな点というか、個人的に「住めば都」的なものがあって、今は都になってきたというのがあります。さっきもちょっと話をしたけど、10年前に入った頃は、自分の能力不足で、正しいことを指導しても聞いてもらえないっていうのを実感して、はっきり言って地獄のような苦しみというか、ストレスがすごい溜まっていたんです。

高島: そうなんですか。

鈴野先生: 例えば、喋りながら練習しても力はつかないんだけど、それを注意しても「じゃあお前は何を教えてくれるんだ」って。直接そうは言われなくても、そういう顔をするんですね。そういうところを乗り越える苦しさがすごくあったけど、それでも戦いながらやってきて、少しでもいいものを残せるようにはなったなっていう実感があります。 それで私も学校に来てホームルームで話をしたり、授業をするのが楽しくなってきた。だから学校の何が好きというよりは、都になってきたなというのがあります。

あとはキレイな学校だから、その意味で不便を感じない点かな。生徒が「トイレがキレイ」って言うのと同じで、当たり前のものがちゃんと当たり前にある。

高島: そうですね。

鈴野先生: 先生たちの仲がいいっていうのもあります。私もいろんな先生たちと仲良さそうだったでしょ。

高島: 仲良さそうでした。

鈴野先生: 卒業を祝う歓送会のステージでは他の先生と肩を組んで歌っていましたし、あと佐藤先生と仲良しっていうのはみんなに広まってたと思うし。プライベートも含めて、なんでも話せるメンバーがいるのはいいところだなと思います。

高島: もっとこうしたらいいのにという点は?

鈴野先生: いつも思うのは、紙が多すぎるということ。学校だからお役所な部分があって、ちょっと直すときもハンコを押して渡すとか。成績処理で少し違ったときにハンコ押さなきゃいけないとか、保健室でテストを受けた人がいて、その人のテストをもらう時にハンコを押さなきゃいけないとか。早退する時に、早退届に名前を書いて担任のハンコを押して、とか。調子悪そうな の見てわかるだろうし、事情を言うだけでいいのに、と思うところはあります。たぶん公務員とか役所って、もっとそうなんだろうなと思います。

高島: そういうところはしっかり、きっちりした学校だなって思います。

編集部: それは先生だけじゃなくて、生徒の方にもそういうルールがけっこうあったってことですか?

高島: はい。それこそ17時45分完全下校なんですけど、その時間まで残る生徒は書類を提出しないといけないとかです。厳しかったなとは思います。生徒を大切にしているということなんでしょうけど。

14. 6年間でどのような成長をするのか

高島: 共立に入学した生徒は6年後の卒業時にどのように成長していますか。どのような成長を望みますか。

鈴野先生: 入学したての中1を見ると、すごく純粋で真面目で頑張ろうという姿勢はあるんだけど、話を表面で捉えるというか、本質的なものをまだ吞み込めない。目先に見えるほうに行ってしまって、よく考えて何かをすることがまだできない状況が中学1年生。少しずつかみ砕いてやればわかるんだけど、そうでなくてもわかるように少しずつ段階を踏んで成長させてあげた いと思っています。 それで、中2になると反抗するのはなんでかなといつも考えてるんだけど、自分は出来てるつもりになるんですよ。中1で1年間経験して、だいたい学校のことはわかってくるし。でも実際は中2でもできないことが多いと思うんです。そこのギャップで、自分のせいで出来ないのを人のせいにする、大人のせいにしてしまう、というのが反抗期のスタートなのかなと。 でもそれも発達段階としてはすごく大事な期間で、中3の終り頃になるとやっぱり自分はできなかったとわかってきて、高校生になるともう1回謙虚に話を聞いていこうという気持ちになって、自分の将来のことを考えて成長していく。そんなふうに思います。 だから、どのように成長していくかというとほんと変ないい方なんですけど、「動物がちゃんと人間になって育っていく」みたいに見えますね。子供から大人の入り口ぐらいまで変化させられていると思います。

あとは本校のことで言えば、さっきの話に出た礼法が身についていたりとか、美術や体育、音楽の知識や技術が身についていく。それがどう活かされるかはたぶんわかっていない状態なんだけど、例えば就職活動の時とか役に立ったんでしょ?礼法とか。そうでもない?

高島: けっこう役に立ちました、礼の仕方とか。

鈴野先生: そういう教養とかが身についた状態に、結果的にはなっていると思います。

高島: うちは校訓が、「誠実・勤勉・友愛」じゃないですか。中高の時はあまりしっくりこなかったんですけど、卒業して同期とかと話してると、共立の生徒って真面目というか、誠実な子が多いよねっていう話になるんです。さっきも言ってたように、書類の手続きとか面倒な部分がきっちりしてる学校だと思うんですけど、そういうのをちゃんと6年間やったからこそ、真面目で誠実な子が多くなるんだなと思います。そういうふうに育てようと思っているんですか?

鈴野先生: そうだね。そう思ってカリキュラムとかイベントとか、修学旅行とかが作られているから、中1から6年間色々とこなしていくとそういうものが身につくシステムになっているんだろうなと思います。 ただ、ここでは何を育てる、これをやったら何が育つとそこまで詰め込んで考えてはいないです。すぐに効果を求めると、だいたい育たないことが多いんです。だから長い目で見て育っていけたらいいなと、育てたいなという気持ちで日々過ごしています。その気持ちが、例えば朝礼での話になったり、学年集会での学年主任の先生の話になったりするんでしょうね。

教育で投げかけたものってほんと、受け取る生徒はざるみたいもので、だいたい落っこちちゃうんです。だけど拾ってくれる部分もあるので、たくさん投げればたくさん落ちても何個か受けっとてくれて、それが組み合わさって、その人として成長できているんだなと思います。

15. 自分の子供も勤務されている学校に入れたいと思いますか。

高島: 自分の子供も勤務されてる学校に入れたいと思いますか。

鈴野先生: 答えが難しいんですけど、子供がいたとして、自分の働いてる姿はちょっと恥ずかしい。だから単純にそういう意味では「うーん」と思うけど、自分がいないこの学校だったら、いいかなと思いますね。

高島: それは何か理由はありますか?

鈴野先生: それなりに見てて安心はできると思います。実際に勤務してても、普通にちゃんとしている良い学校だなと思う。

高島: 変じゃないってことですか?

鈴野先生: それなりにだね。もちろん悪いところもそれなりにあるけど、見過ごせないほどひどいところはないと思う。

16. 女子校の特徴を活かした授業

編集部: 鈴野先生は男女共学の学校への勤務経験もあるとのことですが、女子と男子では教え方とか、授業のやり方はかわるものでしょうか。

鈴野先生: どう授業するかというところで私が意識するのは、特に数学は、男の子は「この問題どう?」ってポイって投げちゃった方が勝手に考えるんですよね。女の子は投げられた時に、わからないとそこで拒絶が生まれちゃうことがある。だから「これできるよね。これできるよね。これできるよね」って、下から積み上げていく教え方の方が効果的だなと感じます。 そういう意味で、授業をする手段としての女の子用の話し方というのに気づいて、意識的にやっています。共立の他の先生も、授業の作り方とかを見るとやっぱり意識していると感じます。

17. 女子校のメリット

編集部: 女子校だからこそできることって何かありますか?

鈴野先生: 例えばその礼法とか美術とか、男子と一緒にやってたら出来ないなと思います。ちゃんと成立しているのは、女子だけでやっているからだと。あとは、ダンスとか歌とかも、男子がいないことがすごくいいなと。異性を意識せずにできるのはいいところだと思います。

編集部: 確かに。男子は絶対ふざけたりサボりますよね。私も自分が高校生だったら、歌でも声を出さなそうだし、ダンスも絶対やりたくなかったと思います。

18. 授業で使う教材について

数学の授業で使うオリジナルプリントについて、作成の意図、工夫などを聞いてみました。動画でご覧ください。

「みんなの解答」:生徒の解答を添削し、みんなの解答をまとめた教材

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