海陽中等教育学校　先生インタビュー「『リバタリアン』と社会で戦える人材の育成を」Part.１

将来の日本を牽引するリーダーを育成するという目的で、従来の「進路指導部」から「キャリアデザイン部」という名称に変更し、「キャリア構想力」の養成を目指しています。そのためには、「ディシプリン」（いわゆる「学力」の増進、体系的な「知識」の獲得）が必要ですが、それだけでは持たない生徒もいます。ディシプリンだけでは厳しい、学びが自ら発動しにくい生徒であっても学校は「生き甲斐の空間・承認の空間」であるべきです。この縦軸「ディシプリンの確立」と横軸「承認の空間作り」の二つがあって、生徒たちが生きていく空間ができると考えます。デザインとは、縦と横が生み出す空間があって初めて成り立つものです。キャリアは、生徒自身がデザインしていくもので、デザインの主語は生徒自身であると定義しています。

現実的には、学ぶ意欲はあるものの承認体験が△の生徒や、友達作りは上手だけれども学ぶ意欲は△といった生徒がいますので、6年間で教員は学び（ディシプリン）を上げていく役割を、ハウスのスタッフは「承認空間づくり」の役割を果たすために尽力しています。このように、生徒自身の自由なデザインを、教員とハウススタッフがそれぞれの立場から支援していきます。 キャリアといっても、「就職」に役立つコンテンツを習得させているわけではありません。そもそも現存する職業の中で将来を決めること自体が現状認識としてずれがあると思います。自分で将来をデザインする力こそが必要であると考えます。

東京大学の受験生像としては、学ぶ意欲も承認体験も高い生徒が理想ではありますが、実際は、学力はあっても友達との関係がうまくない生徒もいます。その生徒たちの人間力を高めるために教室とハウスとで支援しています。

まずは、高3の秋に生徒を弱気にさせないようにすることです。英・算・国に完成はありませんので、その時期から理社にシフトさせるようにしています。また、科目を減らさないよう徹底させること、大学の優位性を何で決めるかを考えさせること、偏差値だけで学校を決めさせないようにすることです。そのためには個別の面談がとても大切になります。いろいろなスタッフがいますので、ここが本校の強みです。そして、合格者を増やすためには、共通テスト後に伸びるかどうかが勝負になってきますので、全寮制の利点を生かして時間を見つけ添削指導を行っています。

東大生を増やすというよりも、社会には、頭はいいが他者を引きずり下ろして自分が勝ち残ろういといういわゆる【リバタリアン】が存在するのも事実で、彼らと渡り合える人物になってほしい、そういった思いをもって接しています。

国公立大学の医学部受験者が増加しています。一方、工学部・農学部・薬学部・法学部の受験者は減少傾向です。志望理由書を高２の3学期に書かせており、その内容の深まりが、その後の学力の伸びに明確に関係していると考えています。 そして、卒業後の様子を見ると、その時の志の高さが生き方につながっていると思います。目標自体は時間と共に変わっていきますが、理想を手放さない卒業生（青年）たちは何らかの「こと」をし始めているように見えます。